「株価は企業の将来を映す鏡」とも言われますが、企業業績以外にも景気や金利、時には天候といったように、株価はさまざまな要因が絡み合って動いています。
特に最近では、欧米諸国や日本の金融政策の変更によって、外国為替市場が大きく変動しており、株価に与える影響が高まっています。そこで今回は、為替と株の値動きについて考えていきます。
為替が動く理由は?
2024年8月5日、日本の主要株価指数である日経平均株価が歴史的な下落に見舞われました。下落の要因はひとつだけではありませんが、主な理由とされているのが、日本の金融政策の変更です。日銀(日本銀行)は、7月30~31日に行われた金融政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げる追加の利上げを決定しました。
政策金利の変更は、為替相場に影響を与える大きな要因となります。投資家のマネーは、2国間の金利差を狙って、金利の低い通貨から金利の高い通貨に流れやすくなるからです。
たとえば、ドル円相場でいえば、ここ数年、金利の低い日本円を売って、金利の高い米ドルを買う動きが加速し、外国為替市場ではジリジリと円安ドル高が進んでいました。
ところが直近では、米国は政策金利の引き下げを行い、一方で日本は利上げへと向かっています。これにより2国間の金利差が縮まり、投資家たちの資金が逆流して、7月以降は円高ドル安への動きが鮮明になりました。
円高が日本株に与える影響は?
為替が円高ドル安に進むと、自動車産業をはじめとする日本の輸出企業には為替差損が発生し、業績の悪化要因になる場合があります。
たとえば、トヨタ自動車<7203>の場合、1円の円高で営業利益が500億円も押し下げられると言われています。7月中旬以降、日本株は厳しい値動きとなっていますが、これは為替の円高推移が嫌気され、輸出関連株全般が売られているのが原因のひとつと言えそうです。
一方で、円高ドル安が業績を押し上げる企業も存在します。代表的なのはニトリホールディングス<9843>で、同社は海外で家具製品を輸入し、国内で販売しています。為替が円高に動けば、その分、仕入れコストが抑えられることになり、業績を押し上げる要因になるからです。実際、同社の株価は7月中旬以降、上昇を強めています。
ただ、基本的には、円高は日本株全体にとってはネガティブ要因です。円高によって全体相場が下落することで、あまり為替と関係のない企業の株価もつられて安くなってしまう傾向があります。
円高のときの米国株投資は損?
では、米国株に投資している場合はどうでしょうか?
米国の個別株や投資信託には、米ドル建てで投資することになります。仮に株価が変動しなくても、為替が円高ドル安に進めば、その分、資産は目減りしていきます。逆に、円安ドル高に進めば、為替差益が発生します。
ただ、米国の株式市場にとっては、政策金利の引き下げはポジティブ要因となりますので、仮に円高ドル安に進んでも為替差損を上回る株価の上昇が期待できる可能性も十分にあります。冒頭で触れた通り、株価を動かす要因はさまざまですので、その時々の状況を把握することが大切です。
また、現在では日米の金融政策の転換期ということもあって、金利の変動に伴って為替市場が大きく動いていますが、これも時間の経過とともに徐々に落ち着いてくるはずです。ですので、長期スタンスの投資であれば、あまり目先の動きに惑わされず、円高で大きく株安に振れる局面は絶好の仕込み場と捉えることもできそうです。
記事作成日:2024年9月19日