時価総額は一時世界トップ
米国半導体大手のエヌビディア<NVDA>の快進撃が続いています。AI(人工知能)ブームを背景に好需要が継続していることから業績はうなぎ登りで、同社の時価総額は一時、マイクロソフトを抜いて世界トップに躍り出ました。
直近のエヌビディアの業績は、2023年1月期に269億7,400万ドルだった売上高は、2024年1月期には約2.3倍の609億2,200万ドルに、営業利益は42億2,400万ドルから約7.8倍の329億7,200万ドル、当期利益は43億6,800万ドルから約6.8倍の297億6,000万ドルに大幅に上昇しました。
エヌビディアの業績(単位:百万ドル) | |||
| 2023年1月期 | 2024年1月期 | 前期比 |
売上高 | 26,974 | 60,922 | 2.3倍 |
営業利益 | 4,224 | 32,972 | 7.8倍 |
当期利益 | 4,368 | 29,760 | 6.8倍 |
2025年度第1四半期決算も、売上高は前年同期比約3.6倍の260億4,400万ドルと過去最高を記録し、営業利益は同7.9倍の169億900万ドル、当期利益は約7.3倍の148億8,100万ドルと好調を維持しています。
株式分割、そしてNYダウ採用へ⁉
エヌビディアはもともと、映像を早くきれいに映すための半導体であるGPU(画像処理半導体)の開発・販売を手がけていました。これがAIの開発に必要不可欠なディープラーニング(深層学習)に適しているとわかり、エヌビディアのGPUに対する需要が飛躍的に高まったのです。
好業績を背景にエヌビディア株は上昇を続け、その時価総額は3兆ドルを超え、一時アップルを抜いて2位に、さらにはマイクロソフトも抜き、世界首位に躍り出る局面もありました。
また、同社が1株につき10株の割合で株式分割を実施したことも株価上昇のひとつの要因となったようです。株式分割によって投資金額のハードルが下がったことで、これまで手の届かなかった投資家が同社株を購入できるようになりました。
さらに、米国市場ではエヌビディアが主要株価指数のNYダウに採用されるとの見方も強まっています。
ライバル企業も次々と対応進める
エヌビディアはさらなる躍進のため、さまざまなAI関連の施策を進めています。6月2日には、次世代AIチップのプラットフォーム「Rubin(ルービン)」を発表しました。
Rubinはパソコンの処理速度を上げるAIアクセラレータと言われるハードウェアで、従来よりもコストとエネルギーを大幅に節約できるとしています。これには新たなGPUやCPU、ネットワーキングチップが含まれています。
このように、AI向け半導体需要の強さがエヌビディアの業績を押し上げ、株価の上昇に繋がっているわけですが、需要の強さはライバル企業のビジネスチャンスも広げています。
たとえば、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD>は6月3日、最新のAI向け半導体を発表しています。さらに、今後は35倍優れた性能が期待できるAI半導体を発売する予定で、2026年には次期シリーズの発売も予定しています。
インテル<INTC>も6月4日、従来より性能を引き上げたAIアクセラレータ「Gaudi 3」をエヌビディア製品の2/3のコストで提供する方針を打ち出しています。
このように、ライバル企業も次々とAI分野への対応を進めています。AI分野は今後も大きく拡大していくことが見込まれるため、エヌビディアも一層の成長が期待されています。
株価は史上最高値を更新後、調整局面
株価は2022年10月安値10.81ドルから今年6月20日史上最高値140.76ドルまで、2年弱で約13倍まで上昇しました。同期間のNASDAQ総合指数は約1.7倍、マイクロソフトは約2倍ですから、いかにエヌビディアが驚異的な上昇であったかが分かります。
しかし、エヌビディアの株価は6月20日の史上最高値140.76ドル以降は調整局面を迎えています。6月24日安値118.04ドルまでわずか2営業日で約16%下落しました。
これは3月8日高値97.40ドルから4月19日安値75.61ドルへの約22%の下落には及びませんが、こちらは1ヶ月超でありインパクトとしては今回の方が大きく感じます。
「この調整局面がどこまで続くか?」がエヌビディアに限らず、米国株や世界中のマーケットの関心事となっています。
アナリストのレポートでは、引き続き生成AIの将来性は明るく、業績の伸びを考えると株価はまだ上昇すると見る向きが多いようです。
実際、6月24日の安値118.04ドル以降はじりじりと戻りつつあり、7月8日には高値130.77ドルまで上昇しました。この間すでに約11%上昇しています。今後の動きが注目されます。
記事作成日:2024年7月9日