フェイスブックから始まり、VRやAR事業も
メタ・プラットフォームズ(以下、メタ)という企業名よりも、「フェイスブック」の方が馴染み深い方も多いでしょう。同社は2004年に創業者のマーク・ザッカーバーグが立ち上げた大学内の交流サイトから始まり、現在では世界最大級のSNSに成長しました。
株式上場後には、画像共有アプリ「インスタグラム」やチャットアプリ「ワッツアップ」などの大型M&Aを行い、順調に事業を拡大していきます。
フェイスブックの社名が世界中の投資家に認知されるなか、2021年10月に突然、社名を「メタ・プラットフォームズ」に変更しました。社名変更の理由についてマーク・ザッカーバーグは、「メタという名前はメタバースを創造するという会社のビジョンに焦点を当てたもの」と発言しています。
その後、事業をSNSサービスの「Family of Apps(FoA)」、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)事業を中心とする「Reality Labs(RL)」の2つに再編しています。
X(旧ツイッター)やTikTokに対抗
メタの動向で最近注目されているのが、2023年7月にX(旧ツイッター)の競合サービスとしてリリースされたメッセージアプリ「スレッズ(Threads)」でしょう。旧ツイッターは米国の実業家イーロン・マスク氏が2022年10月に買収してから、公式アカウント表示への月額利用料導入やユーザーが閲覧できる投稿数に一時的な制限を設けるなどの変更を行いました。
これをチャンスと捉えたメタは、インスタグラムのメッセージアプリとして、テキストやリンクの投稿、他ユーザーからのメッセージへの返信や再投稿が可能な「スレッズ」を開発し、リリースしました。
また、2020年8月に「TikTok」に対抗するため、インスタグラムに新しい短編動画の投稿サービス「リール(Reels)」を開始しています。現在、メタのSNSサービス事業はこのインスタグラムのリールとスレッズを中心に展開されていますが、売上高は好調に推移しています。
AIやメタバース中心に事業拡大へ
一方のVR・AR事業については、ザッカーバーグ自らが、「さまざまな自社製品へのAI(人工知能)導入とメタバース」の2つが優先事項だと述べています。メタバースはVRのプラットフォームで人々をつなげる方法です。
2023年8月には、数十カ国語の音声を翻訳・文字化できるAIモデル「SeamlessM4T」、コンピューターコードの作成を支援するよう設計されたAIモデル「コード・ラマ(Llama)」を発表するなど、AIへの取り組みを強化しています。
メタでは、このほかにも、メッセージサービス「ワッツアップ」のチャットを通じて現地の企業から商品やサービスを直接購入できる支払い機能をブラジル、シンガポールに続き、インドに拡大するなど、事業拡大を進めています。
SNSサービスに押し寄せる規制の波
ただ、世界中で大きなシェアを持ったAI企業、SNSサービス企業には、さまざまな規制の波が押し寄せています。欧州連合(EU)では、欧州委員会が2023年9月6日、メタのフェイスブック、TikTok、アップルのアップストア、アマゾン・ドット・コムのマーケットプレイス、アルファベットのグーグルサーチなど22のサービスをデジタル市場法(DMA)の対象企業としました。これにより、欧州域内での事業展開に規制を受ける可能性が浮上しています。
また、メタは2023年9月6日、英国、フランス、ドイツでのニュース配信サービス「フェイスブックニュース」の機能を年内に中止すると発表しました。これは、カナダ議会がIT大手に対して、報道機関にニュース使用の対価支払いを義務付ける法案を可決したことを受け、2023年8月にカナダでフェイスブックとインスタグラム上でのニュースへのアクセスを制限したことで、ニュース配信サービスの見直しが進められた結果です。
このように、SNSサービスには新たな規制も生まれていますが、メタの提供するサービスは世界中で利用され、大きなシェアを獲得していることも事実です。同社では、新たな分野・サービスの開拓に取り組んでおり、今後も注目を集めることになりそうです。
記事作成日:2023年9月28日