この記事でわかること
・「金利敏感株」とは、金利の変動が株価の材料とされる銘柄のこと
・金利が上昇するとバリュー株、低下するとグロース株が人気となる
・米国の金利上昇が停止すると、ハイテク株、特に半導体関連銘柄が有望
金利敏感株として「グロース株」の位置づけが高まる
「金利敏感株」とは、金利の動きが株価に影響しやすい銘柄のことで、一般的には、金利低下がプラス材料となる銘柄を指します。具体的には、有利子負債の水準が大きい不動産セクター、金利低下による借入ニーズの拡大が追い風となる住宅業界、そして、最近では最も関心が向かいやすくなっている「グロース株(成長株)」などが挙げられます。
業績の成長力が大きく、株価指標のPBR(株価純資産倍率)などから見て、割高感の強い銘柄が「グロース株」と位置づけられます。低PBRや高配当利回りなどの「バリュー株(割安株)」と対照的にとらえられており、基本的には、金利上昇局面ではバリュー株買い、低下局面ではグロース株買いが優位とされています。
グロース株は将来の収益成長期待が株価に反映されることで割高な水準にまで買われる傾向にありますが、金利が上昇すると、理論的には将来の価値が低下することになり、その分、割高に買われていた反動が生じる傾向があります。
また、簡単に言うと、金利上昇は将来のリスクが大きいとみなされることが多く、現時点で割安と評価され、将来のリスクが小さいとみなされているバリュー株に資金が集まりやすい傾向がある、というわけです。
一方、金利が低下した場合はその逆で、将来的な成長期待の高まりやリスクの低下で、グロース株が選好されやすい傾向にあります。
グロース株の中では半導体関連に注目したい場面
米国の10年債利回りは6月2日時点で、3.7%前後での推移となっています。2020年の0.6%台から2022年10月には4.2%超の水準まで上昇しましたが、その後はやや落ち着いた動きとなっています。インフレにピークアウトの兆しが出ていること、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ停止期待が高まっていることなどが要因となります。
6月13日~14日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げの停止が予想されています。2022年3月から始まった米国の利上げはこれまでで10回に上り、その間の利上げ幅は5%にまで達しています。今回、実際に利上げが停止された場合、今後は利下げへの転換期待を織り込みに行く余地が生まれ、金利の低下基調が強まる可能性は高まると見られます。そうなれば、前述したような金利敏感株に物色の矛先が向かうことになりそうです。
ハイテク株はグロース株の一種となりますが、ほぼグロース株と同義で使われている印象です。一般的には半導体やIT関連銘柄などがハイテク株と位置づけられ、GAFAM(アルファベット、アマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズ、アップル、マイクロソフト)などがハイテク株の代表銘柄とされています。金利敏感株やグロース株が買われる場面では、こうしたハイテク株への関心が高まる可能性が高いでしょう。
特にこれからの局面では、ハイテク株の中でも半導体関連株が有望と考えられます。現在は半導体市況の低迷局面にあって、これから回復の局面を探る段階が近づいていること、足元で半導体大手のエヌビディアがサプライズ決算を発表していることなどが要因です。
米国半導体株の上昇は日本の関連株にもストレートに影響を与えるため、日本株では半導体製造装置を手掛ける銘柄などがグロース株として注目されそうです。
アップル(AAPL)
スティーブ・ジョブズ氏らが立ち上げたテクノロジー企業。2007年発売のスマートフォン「iPhone」が大ヒット、売り上げの5割を占める。「Mac」「iPad」なども主要製品。時価総額は世界トップ(2023年5月末)。新たにゴーグル型端末「Vision Pro」の発売を発表。
エヌビディア(NVDA)
画像処理用のGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)に特化した半導体メーカー。AI向け半導体の世界シェアは8割を占めるとされ、「ChatGPT」に代表される生成型AIの登場で成長期待が一段と高まる状況に。2~4月期決算がサプライズとなり、足元で株価は急伸。
テスラ(TSLA)
EV(電気自動車)世界販売の最大手企業、米国では65%のシェアを占める。2022年のEV世界販売台数は約131万台で前年比4割の増加。今後は電動トラックなどの新製品も相次ぎ投入予定のほか、インド市場への参入も模索。予想PER(株価収益率)は70倍超と典型的なグロース銘柄。
ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)
医療保険や医療サービスを手掛ける大手ヘルスケア企業。医療給付サービスを提供する会員数は約5,000万人。2023年2月には在宅医療サービスのLHCグループの買収を完了。米国の医療費は今後も着実な増加が見込まれるため、業績の安定した成長確度は高いとみられる。
ホームデポ(HD)
ホームセンター業界で世界首位。2023年1月末時点で2,322店を展開。住宅リフォーム向け建設資材、家具などを中心に取り扱っており、住宅関連銘柄と位置づけられている。長期金利低下に伴う住宅ローン金利低下は住宅関連需要の増加期待につながる。
レーザーテック(6920)
マスク欠陥検査装置が主力の半導体製造装置大手の一角。EUVマスクブランクス欠陥検査装置は業界標準の検査装置として採用されている。半導体微細化に伴う多重露光工程の増加を背景に業績は急成長。2022年6月期まで5年間で売上高は5.2倍にまで拡大。
メルカリ(4385)
フリマアプリ「メルカリ」を運営。米国でも展開。月間利用者数は2,200万人超、ここ5年間で2倍以上の水準に増大。「メルカリ」内でビットコインの売買ができるサービスも開始。広告宣伝費などの費用抑制効果もあって、2023年6月期は大幅営業黒字に転換の見通し。
記事作成日:2023年6月8日