米国の半導体関連銘柄の株価に陰りが見えています。そこで、今回はAI(人工知能)ブームの中心的な役割を担い、米国株式市場を牽引してきたエヌビディア<NVDA>の2024年5-7月期(第2四半期)決算を中心に、ハイテク株の動向について取り上げていきます。
エヌビディアの業績見通しはAI需要の指標となっています。8月28日に発表した決算では、好決算で順調な見通しが示されたにもかかわらず、市場の過度な期待を越えられず、エヌビディアだけではなく、半導体関連銘柄は調整局面にさらされました。
ただ、AIは未だ黎明期であり、本格的な導入・運用はこれからです。半導体関連銘柄は短期的には調整が続く可能性もありますが、長期的に考えれば、今後も上昇が期待できるのではないでしょうか。
ここからはハイテク関連5銘柄の動向を見ていきましょう。
エヌビディア<NVDA>
8月28日発表した2024年5-7月期決算(第2四半期)は、売上高が前年同期比約2.2倍の300億4,000万ドル、純利益が同2.5倍の169億5,200万ドルとなりました。売上高、純利益ともに四半期としては過去最高となり、市場予想を上回りました。一部項目を除いた1株当たり利益も同2.5倍の68セントとなりました。
好業績の背景にあるのは、AI需要を牽引する主力のデータセンター部門で、売上高は同2.5倍の263億ドルと過去最高となりました。2024年8-10月期(第3四半期)の予想は、売上高は325億ドル(プラスマイナス2%)と予想しています。また、追加で有効期限のない500億ドルの自社株買いも発表しています。
好決算に加え、500億ドルの自社株買いを打ち出したにもかかわらず、株価は8月28日の時間外取引で125ドル付近から120ドル割れへと大きく下落しました。その後も弱含みが続いています。
株価下落の要因は、8-10月期予想に過度な期待をかけていたことにありそうです。会社側が示した325億ドル(プラスマイナス2%)は市場予想を上回るものでしたが、過去の予想が市場予想を大きく上回るものだったため、失望感が出たものと思われます。
その後9月11日にジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)が、イベントで「信じられないほどの需要に直面している」と述べ、次世代AI(人工知能)製品「ブラックウェル」に対する需要が旺盛であると説明し、前日比8.14%の大幅高となりました。
株価は、6月20日上場来高値140.76ドルから8月5日安値90.69ドルへ下落。その後、8月26日高値131.26ドルまで戻しましたが、9月6日安値100.95ドルまで下落。そこから9月11日高値117.19ドルまで戻しました。
マイクロソフト<MSFT>
エヌビディアの主要顧客でもあるマイクロソフトの2024年4-6月期(第4四半期)決算は、売上高は前年同期比15%増の647億2,700万ドルと四半期で過去最高に、純利益は同10%増の220億3,600万ドル、1株当たり利益は2.95ドル(前年同期は2.69ドル)と増収増益となりました。AI機能を活用した企業向けのクラウド事業が好調で、業績を牽引しました。
しかし、クラウド事業の売上高が市場予想を下回ったことで、成長が減速しているとの見方が強まって株価は7月5日上場来高値468.35ドルから8月5日安値385.58ドルまで下落しました。
その後、8月22日高値426.79ドルまで回復しましたが、エヌビディアの決算後の株価下落に連られ、ジリ安が続きました。そこから9月11日高値423.99ドルまで戻しました。
アマゾン・ドット・コム<AMZN>
エヌビディアの主要顧客でもあるアマゾン・ドット・コムの2024年4-6月期(第2四半期)決算は、売上高が前年同期比10.1%増の1,479億7,700万ドル、営業利益は同91%増の146億7,200万ドルと増収増益でした。1株当たり利益も1.26ドル(前年同期は0.65ドル)と増加しました。AI機能を活用したクラウド事業のAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の売上高が前年同期比で19%増の262億8,100万ドルと業績を牽引しました。
増収増益決算だったにもかかわらず、7-9月期の売上高見通しが市場予想を下回ったことや、下半期の設備投資額が上半期を上回る見通しであることを受け、株価は7月8日上場来高値201.2ドルから8月5日安値151.61ドルまで下落しました。
その後は、米国の利下げ見込みから消費回復期待もあり、EC(電子商取引)の成長が期待され株価は回復傾向となり、9月11日高値184.99ドルまで戻しました。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD>
エヌビディアのライバルとなるアドバンスト・マイクロ・デバイセズの2024年4-6月期(第2四半期)決算は、売上高は前年同期比8.9%増の58億3,500万ドル、営業損益は前年同期の2,000万ドルの赤字から2億6,900万ドルの黒字に転換しました。1株当たり利益も前年同期の0.02ドルから0.16ドルに増加しました。
AI需要を牽引するデータセンター・セグメント部門が業績を押し上げています。AIプロセッサーやAIモデル開発に使用される半導体AIアクセラレーターも好調です。7-9月期(第3四半期)の売上高は67億ドルを予想しています。
また、AI用半導体の新モデルを相次いで投入する予定を打ち出しており、現在のAI半導体「MI300」シリーズの後継となる「MI325X」を10-12月期に、2025年には「MI350」シリーズ、2026年に「MI400」シリーズをリリースする予定です。
株価は3月8日上場来高値227.3ドルから8月5日安値121.83ドルへ下落。その後8月20日高値162.04ドルまで戻しましたが、エヌビディアの決算を受けて連れ安となり9月6日安値132.11ドルへ下落。直近は9月11日高値150.16ドルまで戻しました。
インテル<INTC>
エヌビディアを追いかけるインテルの2024年4-6月期(第2四半期)決算は、売上高が前年同期比1%減の128億3,300万ドル、純損益は前年同期の14億8,100万ドルの黒字から16億1,000万ドルの赤字に転落しました。2四半期連続の赤字計上となります。パソコン関連の事業は堅調だったものの、競争が激化しているデータセンター部門、AI向け部門が不振でした。
7-9月期(第3四半期)の売上高見通しは、125億~135億ドルとしています。また、コスト削減のため、全従業員の15%超に当たる15,000人以上の人員を削減する方針も明らかにしています。
8月1日の決算発表を受けて、株価は同日終値29.05ドルから8月2日安値20.42ドルへ急落。その後も20ドル前後での低位もみ合いが続いています。
記事作成日:2024年9月12日