NISAの改正点、総まとめ
少額投資非課税制度(NISA)は、2024年1月にリニューアルします。金融情報への関心が高い人は、「NISA」という言葉を目にしない日はないほどでしょう。では、一般にはどの程度知られているのでしょうか。
NISAの改正点、若い世代ほどよく知っている
日本証券業協会が2023年7月中旬に行なった調査では、既に証券投資をしている人でさえ、新しいNISAの制度を十分に理解しているとは言い難い結果です。「個人投資家の証券投資に関する意識調査」は、日本全国の20歳以上の証券保有者5,000人を対象にインターネットで行なわれました。
2023年までの現行制度から2024年以降の新しいNISAへの改正点として、年代を問わず知られているのは「恒久化」と「年間投資枠の拡大」。ただ、証券投資をしている人達でさえ、ようやく過半数です【グラフ】。改正点は、若い世代ほどよく知られているようでした。
高齢世代の間で比較すると、60代後半の層が、60歳前半の層よりも認知が高くなっている項目がいくつかあります。セカンドライフの生活資金に関心が向いているからでしょうか。
調査時期が7月とはいえ、世間で騒ぐほど中身は知られていないようです。2024年を迎える前に、NISAの変更点を理解しておきましょう。
制度の恒久化=制度をいつまでも使えるようになる
これは全体で最も認知されていました。現行のNISAは期間限定の特例制度です。
「一般NISA」は2014年に始まり、2023年末終了予定でしたが、2028年末まで延長が決まっていました。「つみたてNISA」は2018年開始、2037年末までの制度でした。改正でこれらの期限が撤廃されたのです。
ただし、未成年者対象の「ジュニアNISA」は、予定通り2023年末で終了します。
年間投資枠の拡大=1年間に投資できる額が増える
成人対象の現行NISAには、「つみたてNISA」と「一般NISA」があります。「つみたてNISA」の場合、1年間の非課税投資枠は、元本40万円まで。「一般NISA」の非課税枠は、年に投資元本120万円までです。
これらの枠が拡大され、「つみたて投資枠」が年120万円まで、「成長投資枠」が年240万円までとなります。
なお、「つみたて投資枠」は現行の「つみたてNISA」とほぼ同じ、「成長投資枠」は現行の「一般NISA」をより長期投資向けにリニューアルしたものです。
非課税保有期間の無期限化=一度買った商品をいつまでも非課税で持てるようになる
現行の「つみたてNISA」は積立年を1年目として、それぞれ20年目の年末まで、「一般NISA」は買付年を1年目として5年目の年末までが非課税期間です。
これに対し、新しいNISAでは、「つみたて投資枠」「成長投資枠」のどちらも有効期限がなくなり、いつ換金しても差益は非課税。また、保有期間中の収益分配金や株主配当金も、非課税で受け取ることができます。
つみたて投資枠と成長投資枠をどちらも使える
これは年代により認知の差が大きかった項目です。年齢が上がるにつれ、積立投資への関心が薄くなるからなのだろうか、と推測しています。
新しいNISAは、現行の「つみたてNISA」と「一般NISA」がセットになり、1人で「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を同時に利用できます。これにより、長期の資金作りをしながら、ボーナスのようなまとまった資金で投資をしたり、魅力的な株主優待制度のある株式を買ったり、値動きを見ながらタイミング投資をしたり、といった使い方もできます。
非課税保有限度額の設定=保有できる額に上限が設定される
これは新しいNISAで創設されました。年間の非課税投資枠のほかに、トータルで利用できる非課税投資の残高です。投資元本ベースで1,800万円です。
ただし、このうち「成長投資枠」は1,200万円まで。「成長投資枠」がメインの人は最大1,200万円までで、残り600万円分は「つみたて投資枠」の対象商品で積立投資をするしかありません。「成長投資枠」が1,200万円を超えないよう、「つみたて投資枠」との配分を考える必要があります。
なお、「つみたて投資枠」だけなら1,800万円まで積立投資ができます。
つみたてNISA、一般NISAから新しいNISAへのロールオーバーはできない
現行の「一般NISA」は、投資した年から5年経つと、原則として課税口座に振り替えられます。ただし希望により非課税口座に置くことも可能で、その場合は6年目の「一般NISA」の口座に振り替える手続きをします。これが「ロールオーバー」。6年目は次の5年間の1年目となります。
現行の「一般NISA」から、新しいNISAへのロールオーバーはできません。
売却した分だけ保有できる額に空きができてまた投資できるようになる
これは前述した、上限1,800万円の「非課税保有限度額」に関連します。NISA内の株式や投信を売却すると、その分、非課税保有の残高が減ります。減った分の枠は、翌年になると復活。現金化した非課税枠は翌年以降、再利用できるのです。この枠の計算は、投資元本ベースで行ないます。
最後に、2024年からのNISAの主な概要を【表】にまとめました。制度を正しく理解して、無理のないペースや金額で利用しましょう。
記事作成日:2023年11月13日
(DZHフィナンシャルリサーチ)