MBOやグループ再編目的のM&Aが増加
M&A(企業の合併・買収)に対する市場の関心が高まっています。過去、2005~2007年にかけてもM&Aは盛り上がりを見せましたが、その際は、外資系ファンドなどによる敵対的買収が話題の中心でした。一方、今回は、MBO(経営陣による自社の買収)や親子上場解消などのM&Aが増加しています。
こうしたM&A増加の背景としては、東京証券取引所や投資家から株価を意識した経営を求める動きが強まっていることが挙げられます。中長期視点で経営改革を進めるため株式市場からの撤退につながるMBOを実施する企業、非効率な資本関係改善に向けて子会社を合併、あるいは売却して親子上場を解消する親会社などが増えているのです。
MBOは大幅な事業再構築が必要とされる企業の選択肢の一つです。例えば、EV(電気自動車)の普及が今後急速に進展する可能性のある自動車関連業界なども対象となってきそうです。
親子上場の解消に関しては、対象企業が絞りやすいことも投資妙味(投資への醍醐味)の一つと言えます。とりわけ、PBR(株価純資産倍率)が割安、ROE(自己資本当期利益率)が高い子会社などは、親会社にとって自社に取り込みたい(外部に売却したくない)企業といえるでしょう。
基本的に、M&Aされる側の企業は株価が上昇する傾向があります。PBRが割安、キャッシュリッチなどの企業は、相対的にM&Aの対象になりやすいと考えられます。
それらの観点から話題になりそうな銘柄の例をご紹介します。
話題になりそうな事例の銘柄例
東邦チタニウム<5727>
航空機の機体やエンジンなどで使用されるスポンジチタンを扱う国内2社のうちの1社で世界トップシェア。ENEOSホールディングス<5020>の子会社であるJX金属が持ち株比率50%超の筆頭株主。JX金属は年内にも上場するとの観測があるもようで、その流れでグループ再編が話題にのぼる可能性も考えられるか。
日産化学<4021>
農薬で国内トップクラスの化学品メーカーで、半導体用反射防止コーティング材などの半導体材料も手掛ける。同分野ではアジアトップシェアを保持。各国の戦略物資となり得る半導体の中にあって、半導体材料に関しては日本企業が高シェアを占めている製品も多い。国家戦略としての囲い込みの動きなどが表れる可能性も考えられるか。
中外製薬<4519>
がん領域に強みを持つ医薬品大手の一角。医薬品業界は研究開発費が膨大になりやすく、これまでも世界的にM&Aが活発に行われている。今後こうした波が国内大手メーカーにも波及してくる余地は大きそう。同社に関しては、2001年にスイスのロシュ(世界有数のバイオテックカンパニー)と戦略的提携を実施。現在、ロシュは中外製薬の株式を約60%を保有している。
三菱自動車工業<7211>
国内自動車生産の大手。2016年から日産自動車<7201>、ルノーとの3社連合体制を敷く一方で、三菱商事<8058>の持分法適用会社でもある。今後の本格的なEV普及を見据えれば、3社連合の協調体制を一段と強固にすることも考えられる。今後の動向が注目される。
日本M&Aセンターホールディングス<2127>
M&A仲介で国内トップクラス。地方銀行9割、信用金庫8割、1,000超の会計事務所と提携するなど国内最大級のM&A情報ネットワークを構築。2022年まで3年連続でM&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取り扱い企業としてギネスに認定。M&A市場の拡大でストレートに恩恵、少子化などによる事業継承難からも、中長期的に見通しは良好。
記事作成日:2024年3月4日