出遅れ株とは?
全体相場が上昇していく過程で、株高に乗り遅れた銘柄を「出遅れ株」と呼びます。こうした出遅れ株は、先に上げた銘柄の株価上昇が(短期的な利食い売りなどにより)一服した場面で注目度が高まりやすくなります。
ただし、全体相場の上昇トレンドが続いている状態が理想であり、相場が下落していく局面では、物色は向かいにくいと考えられます。
出遅れ銘柄と判断するための指標はいくつかあります。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数はもちろんですが、その銘柄が属しているセクターであったり、その銘柄が関連しているテーマ内での比較などです。
また、出遅れの判断は基本的には一定時点からの株価騰落率となります。そして基準となる時点は、一般的には、年末や年度末、四半期末のほか、全体相場の安値時点、ある業種やテーマの上昇する直前時点などが適当と考えられます。
相場の転換点から出遅れ株を探す
以下に取り上げた銘柄は、2つの時点と直近(9月20日現在)を比較した場合の出遅れ(株価騰落率が低い)銘柄となります。
1つ目は、今年の安値を付けた8月5日との比較です。日経平均はこの期間で約22%の上昇となっています。
ただし、「出遅れ株」には出遅れている明確な理由が存在するケースもあり、この1つ目の場合は、為替相場が基準時と比較して大きく円高に振れています。そのため、単に騰落率が低いだけでなく、輸出比率が50%未満と高くない銘柄(インバウンドの恩恵が大きい銘柄も除く)を対象にしました。
2つ目は、2023年3月末水準との比較です。この場面は、米国の経済指標の悪化、インフレのピークアウト期待などを背景に、米国における利下げ転換期待の高まりから日経平均も上昇しはじめたタイミングです。
米国の利下げ期待、それに伴う金利の低下は、バリュー株(割安株)よりもグロース株(成長株)にとっての買い要素となります。
そのため、この期間における騰落率の低い銘柄の中で、グロース株と位置付けられる銘柄を対象にしました。ちなみに、この期間の日経平均の上昇率は約41%となっています。
ネクセラファーマ<4565>
バイオ医薬品の老舗企業です。2024年4月にそーせいグループから商号変更しています。8月5日終値との比較で株価騰落率はマイナス3.5%となっています。
注目されていた統合失調症治療薬候補の試験データを提携先のニューロクライン社が開示しましたが、短期的な材料出尽くし感で株価は急落しました。ただ、50億円のマイルストーンを受領しているなど、試験結果はポジティブとの評価もあり、足元の株価下落はやや過剰反応とも捉えられます。
株価は全体相場が急落した8月5日からさらに下げ、9月17日には年初来安値となる1,237円まで売られました。ただ、3月には1,826円をつけていただけに、顕著な出遅れ銘柄と言えそうです。
JFEホールディングス<5411>
国内第2位の鉄鋼メーカーです。海外売上比率は約4割と推定されています。8月5日終値との比較で株価騰落率はプラス5.8%にとどまっています。
第1四半期決算発表時に通期業績見通しを下方修正したことが株価の出遅れにつながっています。ただ、業績下振れにもかかわらず年間配当金は110円計画を維持しており、配当利回りは5.7%の水準となっています。見直し余地は大きいと言えるでしょう。
日経平均が歴史的な暴落となった8月5日からは若干上昇しているものの、同業他社に比べて、株価の戻りは鈍い印象です。9月2日には2,059円まで回復していますが、今後は高い配当利回りが株価の下支え要因になりそうです。
ヤマトホールディングス<9064>
宅配便の最大手企業で、国内シェアは4割程度と推定されています。8月5日終値との比較で株価騰落率はプラス1.4%にとどまっています。
第1四半期営業損益が142億円の赤字となり、前年同期比158億円の悪化となったことが弱材料視されています。取扱数量は増加も、法人を中心に単価の低下が大きく影響しました。ただ、通期業績の下振れ懸念は織り込まれたと考えられ、PBR(株価純資産倍率)1倍割れ水準からも下値不安は乏しい印象です。
8月5日の全体相場急落につられて株価は安くなりましたが、その後も安値圏での推移が続いています。PBR1倍割れで配当利回りも2.8%あることから、出遅れ感の強い銘柄と言えそうです。
エムスリー<2413>
日本最大級の医療従事者専門サイト「m3.com」を運営。治験などにも事業を拡大しています。ソニーグループ<6758>が3分の1以上の株式を保有しています。
2023年3月末との比較で株価騰落率はマイナス27.4%となっています。2023年3月期、2024年3月期と営業減益に転じていますが、海外中心に売上成長は続いているほか、営業利益率も3割近い高水準を保っています。計画通り2025年3月期の増益転換が視野に入れば、出遅れ修正の動きも想定されます。
2023年3月末には、株価は3,300円台をつけていましたが、下落傾向が続き2024年9月20日現在では、1,500円を割り込んで推移しています。8月5日安値1,126.5円からはある程度戻しましたが、依然安値圏から脱却できていない出遅れ株と言えそうです。
日本M&Aセンターホールディングス<2127>
国内の中堅・中小企業に特化して、M&A(企業の合併・買収)仲介や企業再編支援などを手がけています。M&A仲介は、地域の主要会計事務所をネットワーク化しており、国内最大手の位置づけです。
2023年3月末との比較で株価騰落率はマイナス31.8%となっています。営業利益成長率はここ数年鈍化していますが、2024年3月期第4四半期に過去最高の成約件数を記録するなど、2025年3月期は売上拡大ペースが足元で再加速化、営業利益率も3割超の高水準となっています。
2023年3月末に1,000円近辺を推移していた株価は、2024年9月20日現在では670円前後での動きとなっています。足元の業績も増収増益が続いており、株価の見直し余地のある出遅れ銘柄と言えそうです。
安川電機<6506>
FA(ファクトリー・オートメーション)関連分野の大手企業で、サーボモータやインバータなどで世界トップ級です。産業用ロボットにも強みを持っています。
2023年3月末との比較で株価騰落率はマイナス21.4%となっています。2025年2月期第1四半期の業績は市場予想を下振れており、足元で株価下落が目立っています。ただ、直近四半期では受注高が明確な回復傾向を示しており、株価の反転に繋がっていく余地もあります。
2024年3月7日上場来高値6,877円をピークに株価は下落基調をたどっています。業績の回復待ちの状態ですが、安値圏で推移している出遅れ株と言えそうです。
記事作成日:2024年9月24日