「累進配当」の関連指数は日経平均越え
「累進配当」とは、配当金の水準を毎年引き上げていく、もしくは、水準を維持する方針のことです。東京証券取引所による資本コストや株価を意識した経営(いわゆるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ改善)要請などもあって、ここ数年で配当性向(当期純利益の何%を配当金に回すかの目安)目標を導入する企業が増えるなど、株主還元強化の動きが広がっています。
こうした中で、累進配当制度の導入企業が増加しています。累進配当制度は、配当水準を引き上げるだけでなく、引き上げた配当水準を今後も低下させない施策であるため、基本的に業績が悪化しても配当が維持されます。
ですので、安定した配当収入が期待できることに加え、業績悪化などで株価が下落する際にも高配当(好配当)の魅力で下値抵抗力が働くことも期待できます。
キャピタルゲイン(値上がり益)だけでなくインカムゲイン(配当収入など)にも税金がかからないNISA(少額投資非課税制度)向きの銘柄とも言えそうです。
日本経済新聞社では、「日経累進高配当株指数」を公表しています。これは、国内に上場する銘柄のうち、10年以上連続して累進的な配当を続ける(減配せず、増配か配当維持を続ける)銘柄の中から、予想配当利回りの高い30銘柄を選んだ株価指数です。
直近1年間(7月1日現在)での同指数上昇率は約40%、10年間では約3.2倍となっています。同期間の日経平均はそれぞれ20%、2.6倍程度であり、大きく上回って推移しています。
このような累進配当銘柄など値上がり益+高配当(好配当)も期待できる銘柄をご紹介します。
東ソー<4042>
日経累進高配当株指数採用銘柄。総合化学メーカー大手の一角。塩ビモノマーや塩ビ樹脂で国内トップシェアを誇るほか、苛性ソーダでもアジア有数。そのほか、自動車排ガス浄化触媒用製品、歯科材料、水処理装置など幅広く手がける。
安定配当を基本として、2009年度以降は減配を行っていない。2025年3月期配当金は前期並み85円を計画。配当利回りは4.15%(7月29日現在)。
株価は2022年11月安値1,502円から今年5月13日高値2,239円まで上昇。その後決算を嫌気されて5月16日安値1,902.5円まで下落し、直近はそこからやや戻した2,000円~2,150円程度でのもみ合いとなっています。
武田薬品工業<4502>
日経累進高配当株指数採用銘柄。国内製薬業界のトップ企業。がん、希少疾患、血漿分画製剤、神経精神疾患、消化器系疾患、ワクチンの6つのビジネス領域に注力中。
これまで10年以上、年間配当金180円維持方針を貫いてきたが、2024年3月期は8円増配の188円配当を実施。会社側では毎年の年間配当⾦を増額または維持する累進配当の⽅針を掲げている。2025年3月期配当金も196円に増配計画。配当利回りは4.55%(7月29日現在)。
株価は2023年9月高値4,873円から同年12月安値3,900円まで下落、その後はおおよそ4,000円~4,500円でのもみ合いが続いています。
三菱重工業<7011>
総合重機の最大手企業。原子力、航空機など事業領域は幅広い。2024年3月期に「航空・防衛・宇宙」事業の受注高は急拡大。2027年3月期までの中期計画では防衛事業を成長分野と位置付け。
2024年度から2026年度までの3カ年中期経営計画では、中長期的な累進配当を実現する還元方針としてDOE(株主資本配当率)を採用している。純利益に対する配当額の割合を示す配当性向を掲げる企業は多いが、DOEは変動の少ない株主資本に対する割合なので配当水準が安定しやすい。2025年3月期配当金は前期比2円増配の22円を計画、2027年3月期は26円配当を想定。配当利回りは1.19%(7月29日現在)。
株価は長期的に上昇傾向で、7月8日上場来高値2,087円以降は1,900円前後で上昇一服となっています。
住友商事<8053>
総合商社大手の一角。相対的に資源事業のウェイトが低く、バランスの良い収益構造となっている。北米向け鋼管事業に強みを持つ。ほかの総合商社同様、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャーの保有銘柄でもある。
2025年3月期からの3カ年中期計画では、株主還元として、総還元性向40%以上(純利益に対する配当額+自己株式取得額の割合)、累進配当を打ち出している。2025年3月期配当金は前期比5円増配の130円を計画し、自己株式取得は500億円を想定。配当利回りは3.37%(7月29日現在)。
株価は長期的に上昇傾向でしたが、5月2日上場来高値4,433円以降は若干下落ぎみで、7月26日安値3,747円まで下落しています。
三井不動産<8801>
オフィス賃貸やマンションなどの分譲事業を主力とする総合不動産の最大手企業。米国や英国での物件開発にも注力。東京ドームの親会社でもある。2024年4月に新グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」を公表。2027年3月期まで3カ年の株主還元策として、総還元性向50%以上、配当性向35%程度、利益成長と連動した安定した増配(累進配当)を表明している。2025年3月期配当金は前期比2円増配の30円を計画。配当利回りは1.93%(7月29日現在)。
株価は2023年1月安値741.3円から今年4月15日高値1,709.5円まで上昇、その後5月30日安値1,351.5円まで下落し、以降はおよそ1,400円~1,600円でのもみ合いとなっています
KDDI<9433>
総合通信の大手企業。auじぶん銀行、auカブコム証券、auペイメントなどを傘下とする金融・決済事業を拡大中。CATV大手のJ:COMなども子会社。株主還元方針としては、配当性向40%超で持続的な増配を目指すとしているほか、機動的な自己株式取得も行うとしている。2025年3月期配当金は前期比5円増配の145円を計画。ちなみに、2025年3月期は23期連続での増配となり、長期的に累進配当を実施している銘柄と言える。配当利回りは3.19%(7月29日現在)。
株価は1月上場来高値5,080円から6月安値4,120円まで下落、その後7月23日高値4,622円まで戻しています。
記事作成日:2024年7月29日