半導体製造装置からソフトウエアまで幅広い銘柄に恩恵
米国株式市場では、AI(人工知能)が注目のテーマとなり、関連銘柄が株式市場の上昇をけん引しています。象徴的なのはエヌビディア<NVDA>で、AI向け半導体の需要が大幅に高まったことで、その製造・販売を行う同社が順調に業績を伸ばし、株価を大きく上昇させています。
そこで、今回はエヌビディアやAIに関連する銘柄に焦点を当てました。
AIで注目すべきは、そのエコシステムです。エコシステムとは、業界や製品がお互いに連携することで大きな収益構造を構成している状態のことです。つまり、AIの利活用には、多くの企業がかかわっているということです。
たとえば、半導体製造装置では、アプライド・マテリアル<AMAT>、ラム・リサーチ<LRCX>、半導体メーカーでは、前述したエヌビディアのほかに、ブロードコム<AVGO>、クアルコム<QCOM>があります。
また、メモリー関連では、マイクロン・テクノロジー<MU>、AIを利活用するソフトウエアでは、メタ・プラットフォームズ<META>、アルファベット<GOOGL>、マイクロソフト<MSFT>などの巨大企業のほかにも、パランティア・テクノロジーズ<PLTR>があります。
アプライド・マテリアルズ<AMAT>
同社は世界最大規模の半導体製造装置メーカーで、多様な半導体チップの製造工程を幅広くカバーしています。5月16日に発表した2024年2-4月期(第2四半期)決算の売上高は、AIプロセッサー製造用機器の好調な需要を反映し、前年同期比0.2%増の66億4,600万ドルでした。1株当たり利益も2.09ドルに増加し、売上高、1株当たり利益とも市場予想を上回りました。
5-7月期(第3四半期)の売上高は約66億5,000万ドル、1株当たり利益は1.83~2.19ドルと予想しています。なお、7月8日には、AI向けによりエネルギー効率の高い半導体チップの配線技術を発表しています。
株価は7月10日上場来高値255.89ドル以降は、7月17日安値219.76ドルまで下落しています。
ラム・リサーチ<LRCX>
同社は半導体製造の各工程向け装置の開発を手がけています。4月24日に発表した2024年1-3月期(第3四半期)決算の売上高は約37億9,400万ドル、1株当たり利益は7.79ドルと、ともに市場予想を上回りました。5月21日には100億ドルの自社株買いと1株を10株にする株式分割を発表しています。株式分割は10月2日の取引終了後に実施されます。
3月26日には、次世代のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電子機械システム)ベースのマイクロフォンと、無線周波数フィルタを実現する世界初の量産向けパルスレーザー成膜装置を発表しています。
この製品は、すぐれた性能、能力、機能を備えたスマートフォンや車載機器の製造に利用でき、半導体メーカーに販売されるとのこと。
株価は7月11日上場来高値1,130ドル以降は、7月17日安値967.19ドルまで下落しています。
ブロードコム<AVGO>
同社は主に通信機器用の半導体製品の開発、設計、販売を行っています。6月12日に発表した2024年2-4月期(第2四半期)決算の売上高は124億8,700万ドル、1株当たり利益は10.96ドルと、ともに市場予想を上回りました。
同社はAIアプリケーションで使用される高度なネットワーキングチップを製造しており、AI関連の需要が業績を押し上げています。
また、2024年のAI関連半導体の売上高を従来予想の100億ドルから110億ドルに引き上げています。さらに、決算と同時に、1株を10株にする株式分割を発表しました。株式分割は7月15日の取引終了後に実施されます。
株価は6月18日上場来高値185.16ドル以降は弱いもみ合いとなっていましたが、7月17日安値155.61ドルまで下落しています。
クアルコム<QCOM>
同社はスマートフォンの通信用半導体を主力としており、工場を持たないファブレス企業です。2024年1-3月期(第2四半期)は、売上高が93億8,600万ドル、1株当たり利益は2.44ドルと、ともに市場予想を上回りました。さらに、4-6月期(第3四半期)の予想は、売上高が88億~96億ドル、1株当たり利益が2.15~2.35ドルと好調を予想しています。
同社では、パソコン向けや自動車向け半導体市場に進出することでスマートフォン用半導体への依存度引き下げを図っていますが、今年は影響の大きい中国のスマートフォン市場が回復し始めると予想しています。
株価は6月18日上場来高値230.63ドル以降は弱いもみ合いとなっていましたが、7月17日安値190.56ドルまで下落しています。
マイクロン・テクノロジー<MU>
同社はコンピュータ・ネットワーク、クラウド、モバイルなどで使用されるDRAMやフラッシュメモリーの開発・製造を行っています。2024年3-5月期(第3四半期)決算は、売上高が68億1,100万ドル、1株当たり利益は0.62ドルと、ともに市場予想を上回りました。6-8月期(第4四半期)の売上高見通しは74億ドルから78億ドル、1株当たり利益予想は1.08ドル前後を予想しています。
エヌビディア製プロセッサーと連携してデータを処理する「広帯域メモリー(HBM)」は高い需要が継続しており、同社では、HBMの2024年分は完売、2025年供給分の大半は既に割り当て済みだと説明しています。
株価は6月18日上場来高値157.54ドル以降は弱いもみ合いとなっていましたが、7月17日安値119.23ドルまで下落しています。
パランティア・テクノロジーズ<PLTR>
同社の生い立ちは、米国の諜報機関向けにビッグデータ解析ソフトウエアの構築を始めたことです。その後、ソフトウエアの利用は米国諜報機関のほか、米国防総省や米陸軍などのその他の政府機関、同盟国にも利用が広がり、さらには民間の大手企業にも拡大しました。
AI関連サービスの需要拡大が大きく貢献し、2023年の純利益は約2億1,000万ドルとなり、初めて通期での黒字を達成しました。2024年1-3月期(第1四半期)決算は、売上高が前年同期比20.7%増の約6億3,430万ドルとなりました。
政府向け売上高が同16%増の3億3,500万ドル、民間向け売上高が同27%増の2億9,900万ドルとなっています。なお、同社では、通期売上高見通しを26億8,000万ドルから26億9,000万ドルのレンジに引き上げています。
株価は2022年12月27日安値5.92ドル以降上昇が続いており、今年7月15日高値29.3ドルまで上昇しています
記事作成日:2024年7月18日