さまざまなIT分野に果敢にチャレンジ
現在の社名は「アルファベット」ですが、私たち日本人にとっては「Google(グーグル)」と言ったほうがピンとくるのではないでしょうか。
アルファベットは、2015年にGoogleのホールディングカンパニー(持ち株会社)として設立されました。子会社の中心は、多種類の言語による文字、画像、動画、地図、ニュースなど情報検索サービスを展開する「Google(グーグル))」で、検索サイトとしては、世界でトップのアクセス数を誇っています。
持ち株会社設立後、アルファベットは事業部門の再編に乗り出し、2020年に「Google Services」、「Google Cloud」、「Other Bets」の3部門に再編されました。事業の中核は、Google Services部門のAndoroid、Chrome、検索機能、YouTubeなどでの製品販売や広告収入で、広告収入はアルファベット全体の売上高の約8割を占めています。
ただ、Googleのようにインターネット広告市場で大きな力を振るい、支配力を持つ存在になると、米国や欧州(EU)ではたびたび、独占禁止法違反を指摘されるなどのリスクも発生しています。
生成AIにも注力
一方、米国の株式市場では現在、今後のAI(人工知能)の拡大に対する期待感を背景に、半導体関連株が堅調な動きをしています。アルファベットも今後のAI活用を担う重要な存在として投資家の注目を集めています。
すでに、2023年3月には、生成AIを使った対話型ソフト「Bard(バード)」の検索機能での利用を開始し、先行するマイクロソフトの生成AI「ChatGPT」を追撃する態勢に入りました。また、生成AI技術による新たな広告作成も計画しています。ただ、2月にBard(バード)のデモンストレーションを公開した際には、不正確な回答が生成されて株価が急落するという失敗も経験しています。
そこで、アルファベットでは、2023年4月に、AI研究部門「グーグル・ブレイン」と傘下のAI企業「ディープマインド」を統合し、AIに関する研究の強化を発表しています。
2023年6月には、生成AI を商品検索に活用し、生成AIが合成した画像により、衣料品が体型に合うか確認できるバーチャル「試着」機能を発表しました。さらに、生成AIを利用して旅行先の情報を調べたり、ルートを確かめたりする新たな手法も導入しています。
期待が高まる第2の柱「Google Cloud部門」
アルファベットの事業の中で、第2の柱となっているのがGoogle Cloud部門です。クラウド事業としては、アマゾン・ドット・コムやマイクロソフトには及ばないものの、アルファベットが展開する事業の中で、今後、最も成長が見込まれる事業の1つと見られています。
興味深いのは、Other Bets部門が展開するさまざまな事業でしょう。アルファベットは潤沢な資金を活用して、新たな事業に投資、あるいは子会社で乗り出しています。
たとえば、医薬品関係の企業には、過去2年間で90社以上に投資を行っています。新たに設立したソフト開発会社の米イントリンシックは、産業用ロボット向けの技術開発を行う中で、産業用ロボット向けAIソフトを開発する米ビカリアスを買収しました。自動運転車の開発を行うアルファベット傘下のウェイモは、すでに自動運転タクシー(ロボタクシー)サービスを米国の4都市で展開しています。
このようにアルファベットは、すでにGoogleという検索サービスの域を飛び出し、さまざまな事業分野で新たな挑戦を行っており、今後も注目の企業と言えそうです。
なお、7月に発表した4-6月期(第2四半期)決算では、売上高や利益が事前予想を上回るなど、足元の業績も好調に推移しています。
記事作成日:2023年8月24日