この記事でわかること
・景気悪化の局面では、キャピタルゲインを得ることは難しい
・連続増配の期間が長い企業ほど、減配の可能性が低いと考えられる
・2023年はディフェンシブ性の強い銘柄に注目
2023年はディフェンシブ性の強い高配当銘柄に注目
株式投資で利益を得る方法にはいくつかありますが、ここでは以下の2つについてご説明します。
ひとつは、安いところで買って、株価が上昇した時に売却する方法。これを「キャピタルゲイン」(値上がり益)と呼びます。もうひとつは、「インカムゲイン」と呼ばれ、配当などを受け取るという方法です。
一般的に景気の悪化局面では株価が低迷しやすく、キャピタルゲインを得ることは難しくなりますが、高配当を出している銘柄は株価の下値不安(株価がどこまで下がり続けるのかわからず不安な状態のこと)が少ないとされています。
高配当銘柄は、年間の配当を株価で割った「配当利回り」で判断します。この数値が高いほど、投資金額に対しての配当の利回りが高いことを示します。
株価は日々変動しますので、配当利回りもそれに応じて変動します。配当が同じなら、株価が高いほど配当利回りは低く(例:配当100円÷株価2,000円=配当利回り5%)、株価が低いほど配当利回りは高くなります(例:配当100円÷株価1,000円=配当利回り10%)。
米国では、アマゾン・ドットコム(AMZN)やメタ・プラットフォームズ(META)、アルファベット(GOOGL)などの巨大企業が無配を続けています。これは、企業の成長余地が大きいことから、配当に資金を回すよりも将来の事業拡大につながる設備投資により資金を振り向ける必要性があるためです。インカムゲインが期待できない一方で、キャピタルゲインを追求する銘柄となっています。
一方、連続増配(毎年配当金を増やす)する企業もあります。
連続増配の期間が長い企業ほど増配へのこだわりは強いと考えられるので、減配の可能性が低い、つまり、手堅くインカムゲインが狙える銘柄と考えることができます。
現在、欧米の中央銀行では、インフレを抑制するために利上げなど金融引き締めを行っています。この影響によって2023年は、世界的に景気が減速するとの見方が強まっています。株式投資にとっては厳しい環境ということになりますが、その分、ディフェンシブ性の強い高配当銘柄への関心は高まっていくと考えられます。
ダウ | DOW
ダウ・ケミカルを保有する世界最大級の総合化学メーカー。2019年4月、ダウ・デュポンから素材科学事業がスピンオフする形で設立。機能性プラスチック、ポリウレタン・建築用化学品が主要分野。2022年12月期の1株利益6.281ドルに対して、2023年12月期の市場予想は2.777ドル。5.5億~7.25億ドルのリストラ費用計上見込み。予想配当利回りは5.15%。
IBM | IBM
世界最大手規模の多国籍IT企業。コンピュータ関連のサービス、コンサルティング、ソフトウェアに注力。1-3月期決算ではソフトウェアが予想以上に好調、生産性向上策なども収益に貢献。年初には約3,900人の削減方針も発表。2022年12月期の1株利益1.796ドルに対して、2023年12月期の市場予想は8.474ドル。予想配当利回りは5.44%。
クラフト・ハインツ | KHC
世界最大級の食料品メーカー。2015年に「クラフト・フーズ・グループ」と「HJハインツ」が合併して現体制に。著名投資家のウォーレン・バフェット氏が大株主の銘柄として知られる。主要ブランドは「ハインツ」「クラフト」など。2022年12月期の1株利益1.913ドルに対して、2023年12月期の市場予想は2.714ドル。予想配当利回りは4.11%。
スリーエム | MMM
世界的化学メーカー。接着剤やテープなどの安全・産業資材、輸送用機器の保守製品やPC画面フィルターなどの運輸・電子機器を手掛ける。ヘルスケア事業は分社化へ。「開発経営」企業としての位置付け高い。60年以上連続増配が続く。2022年12月期の1株利益10.177ドルに対して、2023年12月期の市場予想は8.5ドル。予想配当利回りは5.91%。
アルトリア・グループ | MO
「マールボロ」「パーラメント」などのたばこ事業が中核。2008年のフィリップ・モリス分離以降は米国市場中心に展開。日本たばこ産業(2914)との合弁会社設立、非公開企業のエヌジョイ買収など、加熱式電子たばこの拡大に注力。2022年12月期の1株利益3.187ドルに対して、2023年12月期の市場予想は5.009ドル。予想配当利回りは8.33%。
ファイザー | PFE
世界トップクラスの医薬品メーカー。抗がん剤「イブランス」、血栓塞栓症薬「エリキュース」、関節リウマチ薬「ゼルヤンツ」「エンブレル」などが主力背品。コロナワクチンも大型化。豊富な資金力を背景に大型買収を繰り返して成長。2022年12月期の1株利益5.471ドルに対して、2023年12月期の市場予想は2.863ドル。予想配当利回りは4.13%。
AT&T | T
大手通信サービス会社。携帯電話などの無線通信、ビジネス・消費者向けに有線通信を提供するコミュニケーション事業が主軸。電話機を発明したグラハム・ベルの設立企業。2022年12月期の1株損失1.217ドルに対して、2023年12月期の市場予想は2.330ドル。1-3月期はフリーキャッシュフローが市場予想を大幅に下振れた。予想配当利回りは6.10%。
ベライゾン・コミュニケーションズ | VZ
米国の通信最大手。固定電話・携帯電話を手掛け、消費者向け主軸にビジネス向けにも展開。メディア事業からは撤退。負担となっていた5G関連投資が峠を越え、今後はキャッシュフロー改善が株主還元の強化につながる余地も。2022年12月期の1株利益5.056ドルに対して、2023年12月期の市場予想は4.644ドル。連続増配を続け、予想配当利回りは7.05%。
日本たばこ産業 | 2914
日本国内でのたばこシェアは約60%と圧倒的。世界的にも第3位メーカーであり、ロシアをはじめ、トップシェア誇る国も多い。海外売上比率約6割。ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みに積極的。2022年12月期営業利益6,535億円に対して、2023年12月期は前期比6.4%減の6,120億円予想。予想配当利回りは6.48%。
住友商事 | 8053
総合商社大手の一角。鋼材や鋼管などの金属事業、船舶や自動車などの輸送機・建機事業、メディア・生活関連事業に相対的な強み。堅実経営で知られる。直近では、他の総合商社と共にウォーレン・バフェット氏による買い増しが明らかに。2023年3月期純利益は5,500億円で前期比18.6%増の予想。利回り水準は総合商社で突出。予想配当利回りは4.71%。
(注1)配当利回りは米企業が4月24日、国内企業が4月25日現在
(注2)1株利益および配当利回りは、米国企業はファクトセット社集計のアナリスト予想平均値、国内企業(利益予想・配当利回り)は会社計画値。
記事作成日:2023年4月27日