確定申告を忘れても大丈夫?損益通算・繰り越し控除はまだ間に合う?
上場株式・ETF・REIT・公募投資信託などを売却して生じた損失は、同一年度の利子所得・配当所得と損益通算が可能です。
控除しきれない部分は翌年以後3年間繰り越し控除ができます。
損益通算・繰り越し控除は確定申告をしていることが要件ですが、忘れてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか?
損失を出した年に忘れてしまった方は、期限後申告をすることで損益通算・繰り越し控除が適用されます。一方で、損益を出した年の翌年以降に確定申告をしないと口座の種類などによって対処法が異なります。
上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除の制度の概要、忘れてしまった時の対処法、制度のデメリット・注意点を解説していきます。
上場株式などは、損失を出したら損益通算と繰り越し控除ができる
上場株式・ETF・REIT・公募投資信託などを、売却して生じた損失は同一年度の配当・分配金による利子所得・配当所得(配当所得については、申告分離課税を選択したものに限る)と損益通算が可能です。
損益通算しても損失額が残る場合は、翌年以降3年間確定申告を行い、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等」の金額から繰り越し控除ができます。
出典:国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
この制度は、連続して確定申告することが要件の1つです。よって、確定申告を忘れてしまうと制度の適用対象外になってしまいます。
確定申告の期間を過ぎてしまったら、期限後申告を
確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までです。
上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除の適用を受けるためには、以下の書類を提出する必要があります。
確定申告を忘れた時の対処法を、ケース別で見ていきましょう。
譲渡損失が生じた年に、全ての書類を提出していない
譲渡損失が生じた年に、3つの書類全てを提出していない方は期限後申告により損益通算・繰り越し控除が可能です。
2年目以降に繰り越し控除の申告で確定申告書のみを提出し、付表と計算明細書を忘れた
損失が生じた年の翌年以降に確定申告書のみを提出し、付表と計算明細書を忘れたケースでは該当する口座が特定口座(源泉徴収無し)と一般口座であれば「更生の請求」により損失の繰り越し控除が可能です。
税務署に更生の請求書と確定申告書付表・計算明細書を提出します。e-Taxでも申告が可能です。
更生の請求とは、確定申告期限後に申告書に書いた税額などに誤りがあったことを発見した、確定申告をしなかった場合などで、申告をした税額などが実際よりも多かった時に訂正を求める手続きです。
なお口座が特定口座で源泉徴収有りの場合、納税者が「確定申告しないことを選択した」とみなされ更生の請求はできません。
上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除のデメリット・注意点
上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除の制度を利用することで、損失と利益(損失が生じた後3年間を含む)の合算が可能になります。
所得が減り納付する所得税額・住民税額がおさえられ、健康保険料など社会保険料も少なくなることがあります。
税制改正により、2024年度以降の住民税(2023年度の所得税)は所得税・住民税で異なる課税方式を選択することが不可能になりました。
所得税で申告した所得は、住民税の「合計所得金額」に算入されますので、注意しましょう。
また、配偶者控除の要件の1つに「配偶者の合計所得金額が48万円以下」があります。配偶者特別控除の場合は、合計所得金額は48万円超133万円以下です。
配偶者が資産運用をしており口座を持っているケースで、この「合計所得金額」は「損益通算後」「繰り越し控除前」です。よって損益通算の結果によっては配偶者控除(または配偶者特別控除)の額が少なくなる可能性があります。
親族など扶養控除についても同様です。
まとめ
確定申告を忘れても、損失を出した年であれば期限後申告により制度が利用できます。
この記事を参考に、確定申告を忘れてしまった時の対処法をおさえておきましょう。
記事作成日:2024年3月20日
(DZHフィナンシャルリサーチ)