2024年からの新しいNISA(少額投資非課税制度)のスタートまで、あと2カ月余りとなりました。
新しいNISAで年間非課税投資枠の上限が引き上げられると、現行とは違った観点でNISAを活用するようになるでしょう。よりライフプランに即した使い方になると思います。前回記事「新しいNISAとライフプラン・資金フロー編」に続き、今回は「ストック編」をお届けします。
慌てず、落ち着いて資産形成を
2024年が近づくにつれ、金融機関による「NISA口座争奪戦」が激しくなっています。NISA口座での取引を手数料無料にする金融機関や、手数料相当分をキャッシュバックする金融機関が続々と登場。また、一部のブロガーやインフルエンサーが「できるだけ早く、非課税保有限度額の1,800万円を埋めましょう」などと煽るのも気がかりです。「新しいNISAは利用しないと損だ」という極端な発言も心配です。
そもそも、NISAの対象は、価格変動リスクのある金融商品です。この点を忘れないで下さいね。
あなたは、年間360万円もの金額で、株式や株式投資信託を買うことができますか?投資元本ベースで残高1,800万円分の株式または株式投資信託を持つのは、あなたにとって現実的ですか?
「NISAをする=株式または株式投資信託を買う」ということ。まずは、慌てずに、落ち着いてご自身のフトコロ事情を確認しましょう。さらに、その資産はいつ、何に使いますか?いつまで運用ができますか?使い道に合う資産管理を行いましょう。
バランスシートは資産が一目瞭然
資産管理は、頭の中で思い描くよりも、一覧表を作成した方が判断を下しやすいものです。ある時点で保有する資産と負債(ローンなど)の一覧表を「貸借対照表」といいます。「バランスシート」とも呼ばれています。
貸借対照表は、保有資産が一目瞭然。いますぐ使えるお金はいくらなのか、まとまった額を用意するにはどれを下ろしたら良いか、ローンを繰り上げ返済するにはどの資産を充てられるか、などを検討しやすくなります。
時おり、ビギナーさんから「投資を(またはNISAを)する金額は、いくらぐらいが良いですか」と聞かれることがあります。このご質問に答えるにも、貸借対照表があれば、判断の助けになりますよ。
【表】は、ごく一般的な家計の貸借対照表です。
この例では、C証券で一般NISAを開設しています。株式投資信託、国内株式、外国株式の合計で180万円です。すぐに使えるお金は「流動資産」の150万円。元本保証の定期預金が210万円あります。リスク資産180万円、すぐ使える150万円、安全な資産が210万円という配分は、あなただったらどう感じるでしょうか?
この配分が適切か否かは、その人それぞれの状況によって違います。例えば生活費。月々の収入が赤字で、普通預金を取り崩しながら生活している家計では、大型家電の故障などを考えると、心もとないかもしれません。子育てが一段落したご夫婦2人の生活で住宅ローンも完済、といった家計なら、ゆとりがあるかもしれません。性格の面ではいかがでしょうか。リスク資産の残高を多いと感じるでしょうか。
リスク資産が多いほど、値下がりダメージは大きくなる
次は、「できるだけ早く、非課税保有限度額の1,800万円を埋めましょう」を鵜呑みにし、2024年になるやいなや、普通預金の大半と定期預金を新しいNISAで投資信託や株式の購入に使ったと仮定して、考察してみましょう【グラフ】。
B銀行の普通預金30万円、C証券のMRF20万円、A銀行の定期預金210万円の合計260万円を、C証券のNISA口座での買付けに充当したとします。便宜上、現金20万円とA銀行の普通預金80万円の残高は変わらない前提にします。「すぐ使えるお金が100万円あればいいかな」という感じですね。
資金移動により、現行NISAと新しいNISAを合わせ、リスク資産は440万円になります。この後、もしもリスク資産が3割目減りしたらどうなるでしょう。【グラフ】の一番下の棒グラフのように、440万円のNISA残高は308万円になってしまいます。金融資産全体の残高は590万円から458万円に減少、132万円のマイナスです。
元のポートフォリオのままであれば、定期預金の210万円の守りが効いており、金融資産全体の残高は536万円。マイナスは54万円に留まります。
「NISAはいくらが適切か」は、その人の資産全体の中で、その人の個人的な事情を踏まえて考えるものです。臨時の出費のために取っておくべき金額はいくらなのか、他の金融資産とのバランスを考えて、NISAでの投資金額を決めていきましょう。
さらに、自分は楽観的なのか、悲観的なのか、といったご自身の性格も重要です。ストレスの感じない金額は、どの程度でしょうか。冷静になってNISAに投じられる金額を設定しましょう。
記事作成日:2023年10月30日
(DZHフィナンシャルリサーチ)