株や投資信託の利益に対する税金は約2割
資産運用で得た利益には税金がかかります。たとえば、株や投資信託を売って10万円の利益(譲渡益)が出た場合、税金が約2割(20.315%)引かれ、投資家の手元には約8万円残ります。これは譲渡益だけでなく、配当や分配金についてもいえることで、やはり約2割が税金として引かれることになります。
「せっかく資産運用を始めても、2割も税金で持っていかれるのか……」とため息をついた方もいるかもしれませんが、この税金がゼロになるという、うれしい制度があります。それが「NISA」です。
NISAとは、正式名称「少額投資非課税制度」といって、投資で得た利益に対する約2割の税金が、一定の条件のもと、まったくかからないという制度です。国民の資産形成を後押しし、「貯蓄から投資へ」を推進する目的で創設されました。
当初は年間限度額100万円でスタートしましたが、その後、120万円に拡大し、つみたて形式の「つみたてNISA」や未成年向けの「ジュニアNISA」が加わりました。これをきっかけに投資を始める人が増え、裾野を広げる一定の効果をもたらしました。
2024年1月からNISAがパワーアップ!
実は、このNISAが2024年1月から、リニューアルしてパワーアップされることになりました。これまで限度額や運用期間が限定されていて、長期の資産形成手段としては物足りず、使い勝手の悪さも指摘されていましたが、かなり改善されることになったのです。
まず、これまで「つみたてNISA」では年間40万円の範囲内で最長20年間、「一般NISA」では年間120万円までで最長5年間と限定されていましたが、その枠が大きく広がります。新しく2つの枠が設けられ、「つみたて投資枠」が年間120万円、「成長投資枠」が年間240万円と、限度額が2~3倍に大幅アップします。しかも、これまで「つみたてNISA」と「一般NISA」はどちらか一方を選ぶ必要がありました(年単位での変更は可能)が、2024年からは両者の併用が可能になります。
さらに、期間限定だった制度自体が恒久化され、非課税投資期間も無期限となります。といっても、無限大に使えるわけではなく、生涯を通じて非課税で保有できる限度額(非課税保有限度額)は1,800万円、そのうち成長投資枠は1,200万円までという上限が設けられます。ただ、これまで一度使った枠は消滅していましたが、今回の改正では保有商品を売って空いた枠が翌年復活して、再利用できるようになります。
NISAの注意点は?
NISAには非課税になるという大きなメリットがありますが、注意しなければならない点もいくつかあります。
まず、「つみたて投資枠」で購入できる商品は、「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」に限られています。一方の「成長投資枠」で買えるのは、株式や投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)などです(一部リスクの高いものは除外)。
さらにNISA口座は1人1口座、1金融機関に限られます(年単位で変更は可能)。株式は証券会社でしか取引できないので、株式を買いたい場合は証券会社に口座を開設する必要があります。扱っている投資信託等の種類や本数、手数料などは、金融機関によって異なります。
また、NISAではない通常の口座で取引して損失が出た場合は、その年に発生した利益と相殺する「損益通算」が利用できますが、NISA口座で取引して出た損失については、損益通算ができません。同様に「翌年以降への損失の繰り越し(損失の繰越控除)」もできません。
これまで説明してきた通り、資産運用は期間が長ければ長いほど、「複利効果」も加わって、お金の増え方が大きくなります。今回のNISA改正で期限を気にせず、より長期的な視点でじっくり非課税での運用を続けることが可能になるので、上手に活用しましょう。
記事作成日:2023年10月24日