米国株
株式市場は、9月利下げを織り込む形に
8月のNYダウは、米国経済のリセッション(景気後退)懸念が強まり、5日には前日比1,000ドル超の下げ幅となり3万8,700ドル台に下落しました。ただ、その後に発表された各種経済指標を受けて景気後退懸念は次第に薄れ、月央に4万ドル台を回復し、出直り基調を強めました。
その後、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「利下げの時は来た」と明確に発言したことで、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げが確実視されNYダウは続伸し、26日には一時41,420.05ドルまで上昇し史上最高値を更新しました。
9月の米国市場は、8月28日のエヌビディア<NVDA>の決算発表の影響と、18日のFOMC(連邦公開市場委員会)での利下げ期待が最大の焦点となりそうです。すでに、8月に行われたジャクソンホール会議で9月利下げが上記のように示唆されたことから、株式市場は底堅い推移が続いています。
一方、利下げ幅は0.25%との事前予想が主流ですが、一部では0.50%に利下げ幅が拡大する可能性を指摘する声も出ています。
マーケットでは年内にさらなる利下げがあるかに関心が向いています。それを占う意味でも、3日のISM製造業景気指数、6日の米国雇用統計、11日の消費者物価指数(CPI)の発表が注目されます。次回のFOMCは11月6日、7日となることから、9月のFOMC後も重要経済指標の発表に一喜一憂する展開となる可能性があります。
このほか、11月の大統領選挙に向けた各候補の活動も活発化し、その経済政策に関心が向くほか、中東の地政学リスクが不透明要因として働く可能性があります。9月のNYダウはアノマリー(経験則)的に下振れを起こしやすい傾向があることにも留意が必要です。
参考銘柄:米国大統領選が株式市場のテーマに
景気敏感株など利下げによるメリットのある株に加え、11月の米国大統領選挙に向けて、民主党のカマラ・ハリス氏、共和党のドナルド・トランプ氏、両候補の政策に関連した銘柄が注目されそうです。
両候補が積極的なのは住宅政策です。一方、大きく見解が異なるのが環境問題でしょう。ハリス氏が優勢なら代替エネルギーなどの環境関連銘柄が、トランプ氏が優勢なら石油メーカーなどが注目されそうです
・ジロー・グループ<ZG>
・エンフェーズ・エナジー<ENPH>
・プラグ・パワー<PLUG>
・エクソンモービル<XOM>
・シェブロン<CVX>
<9月:米国の主要スケジュール>
・9/2:米国市場休場(レーバーデー)
・9/3:ISM製造業景気指数、購買担当者景気指数(製造業PMI)確報値
・9/5:ISM非製造業景気指数、購買担当者景気指数(非製造業PMI)確報値
・9/6:米国雇用統計
・9/10:大統領選候補者討論会(フィラデルフィア)
・9/11:消費者物価指数(CPI)
・9/12:生産者物価指数(PPI)
・9/17:FOMC(18日まで)
・9/19:政策金利発表(FOMC)、パウエルFRB議長会見
・9/23:購買担当者景気指数(製造業および非製造業PMI)速報値
・9/27:個人消費支出(PCE)
日本株
為替の円高推移と追加利上げに警戒
7月の日銀金融政策決定会合で政策金利の0.25%程度への引き上げが決定し、為替の急速な円高を嫌気して、8月初旬の日経平均は急落。5日には前日比4,451円安と1987年10月20日のブラックマンデー時の下げ幅3,836円を超え過去最大の下落幅を経験しました。翌6日は前日比3,217円高と過去最大の上昇幅を記録するなど乱高下しました。その後は円高の落ち着きと、米国市場の上昇を受けて戻りを試す展開に転じました。
9月の日経平均は、為替動向が相場の浮沈のカギを握ってきそうです。6月の日銀短観によると、事業計画の前提となる企業の2024年度想定為替レートは全規模全産業では1ドル=144.77円で、これを境に日経平均は神経質な展開となりそうです。また、引き続き、株式市場のボラティリティ(変動率)も高くなりそうで相場の乱高下には警戒が必要です。
9月20日の日銀金融政策決定会合後の植田日銀総裁会見も注目されます。政策金利は据え置かれるとの市場の見方が大方を占めていますが、7月の会見では年内追加利上げに言及する「タカ派発言」がネガティブ視された経緯があり、その発言内容が関心を集めるでしょう。
9月末株式分割・配当権利取り
物色的には、為替の円高を警戒して内需系バリュー株(割安株)に循環物色が広がる期待があります。また、9月末を基準日とする株式分割、配当、株主優待の権利取り相場が展開される可能性があります。9月は多くの銘柄が株式分割を予定しています。
1対10でソフトバンク<9434>、1対5ではソニーグループ<6758>、TDK<6762>、1対3でアサヒグループホールディングス<2502>、三井住友フィナンシャルグループ<8316>、1対2でニデック<6594>、などがあり、権利落ち後の動向も注目されます。一般的に、9月相場はこの権利取りの動きから株価は底堅い動きとなる傾向があります。
参考銘柄:株式分割で投資家層の拡大に期待
一般的に、株式分割を行うのは株価が高い企業です。株式分割を行うことで株価の購入に必要な金額が下がり、これまで株価が高くて手が届かなかった投資家の買いが期待できます。
・ソフトバンク<9434>
・ソニーグループ<6758>
・TDK<6762>
・アサヒグループホールディングス<2502>
・三井住友フィナンシャルグループ<8316>
・ニデック<6594>
<9月:日本の主要スケジュール>
・9/6:全世帯家計調査
・9/9:景気ウォッチャー調査
・9/12:国内企業物価指数
・9/16:日本市場休場(敬老の日)
・9/19:日銀金融政策決定会合(20日まで)
・9/20:植田日銀総裁会見、全国消費者物価指数
・9/23:日本市場休場(秋分の日の振替休日)
・9/26:日銀金融政策決定会合議事要旨(7月開催分)、9月末権利付き最終売買日
・9/27:東京都消費者物価指数
記事作成日:2024年8月27日