AIブームで恩恵大 巨大テック企業に製品提供
ブロードコムは、昨今のAI(人工知能)ブームの大きな恩恵を受けている企業です。同社は主に半導体デバイスおよび企業のITインフラを支援するインフラストラクチャーソフトウェアソリューションの開発や設計、販売を行っています。
AI関連ではネットワーキング・コンポーネント(ネットワークの構築などに必要なハードやソフト)で主導的な地位を占めています。
また、グーグルクラウドと提携して、AIを活用した次世代のサイバーセキュリティの強化を行うなど、巨大企業のアルファベット<GOOGL>やメタ・プラットフォームズ<META>などにAIのインフラ製品を提供しています。
業績好調&株式分割
6月12日に発表した2024年2-4月期の売上高は124億8,700万ドル、一株当たり利益は10.96ドルと、ともに市場予想を上回りました。AI製品の売上高が過去最高の31億ドルとなるなど、AI関連の需要が業績を押し上げました。
セグメント別の売上高では、半導体ソリューションは前年同期比約5.8%増の72億200万ドル、インフラストラクチャソフトウェアは同約2.7倍の52億8,500万ドルと大きく増加しています。
なお、ブロードコムは、7月に1対10の株式分割を実施しました。7月15日からは分割後の株価で売買が行われており、買いやすい株価になったことで株主の増加による株価への好影響も期待できそうです。
積極的な技術革新
ブロードコムは積極的に技術革新を進めており、新商品や新サービスなどを発表しています。
3月6日には、業界初となるPCI Express Gen5/Gen6リタイマーでのAIワークロード拡張を実現しました。これは、AIインフラストラクチャを相互接続するための効率的なソリューションです。
また、3月14日には拡張性のあるAIシステム向けに業界初の51.2Tbpsのパッケージ化された光イーサネットスイッチプラットフォームの提供を開始しました。これは、8つのシリコンフォトニクスベースの6.4Tbps光エンジンと、クラス最高のスイッチチップを統合し、大規模で電力効率の高いAIクラスタの構築に役立ちます。
VMwareの買収
4月9日には、グーグルクラウドとのパートナーシップを拡大し、ブロードコムのプライベートクラウドプラットフォームである「VMwareワークロード」をグーグルクラウド向けに最適化してサービスを追加、ブロードコムがグーグルクラウドのジェネレーティブAI機能を導入することを含むパートナーシップの拡大を発表しました。
さらに、6月25日にはVMwareの最新イノベーションを発表しています。これは、VMwareのプライベートクラウドのセキュリティとパフォーマンス、および全体的なコストの低減により、パブリッククラウドの拡張性と俊敏性を提供するものです。
こうしたブロードコムの躍進の背景には、2023年11月に完了した仮想化ベンダーのVMwareの買収があります。2022年5月に買収を発表して以降、1年半をかけて実現したVMwareの買収は、ブロードコムの業績を大きく伸ばしています。ただ、一方ではブロードコムが旧VMwareの事業やサービスの売却やライセンスの終了などの変更を実施したことで、ユーザー離れを引き起こしているという現実もあります。
AIブームという追い風の中で、今後、ブロードコムがVMwareを含め、どのような戦略を進めていくのかは、非常に興味深い注目材料でしょう。
株価動向
株価は長期的な上昇から6月18日史上最高値185.16ドルまで上昇しました。その後はおよそ155ドル~175ドル程度のもみ合いとなっていましたが、7月24日から半導体関連株全般が大きく下げはじめ7月30日安値143.35ドルまで下落。
翌31日は、マイクロソフト<MSFT>がAI関連の設備投資を前年度比7割以上増やす計画を公表、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD>が好決算を発表、米政府の中国への半導体製造装置輸出規制から、日本、オランダ、韓国など同盟国からの出荷は除外される見込みとの報道などから、半導体関連株が大きく戻す流れとなり、160ドル台まで回復しました。
7月23日にシティグループ<C>が投資家との会合で、半導体業界について「非常に強気」な見方を保っていたとした上で、ブロードコムがエヌビディア<NVDA>に追随する強気の見方を得ているとの報道もあり、AIや半導体関連の好調さは持続しそうですが、株価はここまでかなり上昇してきただけに利食い売りも出やすく、目先は荒っぽい動きが続く可能性もありそうです。
記事作成日:2024年8月1日