米国の超大型株マグニフィセントセブンの一角
エヌビディアは世界有数の米国の半導体メーカーです。半導体の中でも、画像処理半導体のGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)に特化している企業です。
1999年にパソコンゲーム市場向けにエヌビディアがGPUを発明して以降、基本設計が異なる「Turing」「Ampere」「Hopper」などを発表し、製品性能を向上させてきました。近年では、GPUによるディープラーニングが人工知能(AI)開発の起爆剤にとなっています。また、パソコンのほかにも、ロボット、自動運転車などの中枢にも同社の製品が採用されています。
アップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、テスラにエヌビディアを加えた7社は、株式市場ではマグニフィセントセブン(壮大な7銘柄)と呼ばれています。
生成AI用半導体で業績急伸 株価は1年で3倍
2023年8~10月期(第3四半期)の決算は、売上高が約3倍の181億2,000万ドル、純利益は前年同期比約14倍の92億4,300万ドルで、ともに過去最高となりました。
生成AI用半導体が同社の成長につながっており、株価は1年で約3倍に急伸しました。時価総額は、約1兆2,400億ドル(約183兆円)にもなります(11月23日時点)。AI開発向けの主力製品である画像処理半導体を使うデータセンター部門の売上高は145億ドルと前年同期比279%に急増しました。また、パソコン部門も業界全体の減速から持ち直し、売上高は同81%増の28億6,000万ドルとなりました。
2023年11月13日には、AI用先端半導体の性能強化を発表しており、アマゾンやアルファベット傘下のグーグル、オラクルなどが2024年から採用する見通しとなっています。さらに、英半導体設計会社アーム・ホールディングスの技術を利用して、パソコン向けの半導体開発も進めています。
懸念材料は、米中問題?
このように、極めて順調な業容拡大が見込めるエヌビディアですが、先行きの不透明な材料もあります。
それは米国政府による高度なAI用半導体の中国向け輸出規制です。これは、中国政府が軍事強化のために米国の最先端技術を入手するのを阻止することを目的としています。
エヌビディアでは、短期的に中国での減収分は他国の売り上げで十分補えるとしていますが、「競争上の地位は低下している」ことを認め、規制がさらに強化されれば「長期的には競争上の地位と業績がさらに低下する可能性がある」との見方を示しています。
対中輸出規制の対象となる半導体は過去数四半期にデータセンター事業の売上高の約25%を占めており、業績の痛手となりそうです。
さらに、同社のネットワーク事業が本社を置くイスラエルでも、イスラム組織「ハマス」との軍事衝突で、同国内の従業員の多くが召集されており、この状態が続けば人材不足が事業に影響する懸念が指摘されています。
先行きに不透明感が漂っているエヌビディアですが、近年、急速に需要が増加しているAI分野を担う中核企業であり、今後の動向に注目していくべきでしょう。
記事作成日:2023年12月5日