相場格言通りなら、次の上昇は9月以降
米国の株式市場には、「セル・イン・メイ」という有名な相場格言があります。正式には、「Sell in May and go away. Do not come back until St.Leger day. 」(5月に売り逃げろ、そしてセント・レジャー・デーまでは戻ってくるな)というものです。セント・レジャー・デーとは、9月中旬に英国で行われる競馬の重賞「セントレジャーステークス」が開催される日を指します。
この格言は、5月から9月中旬にかけて株は下がりやすく、9月中旬から上がり始める傾向にあるというアノマリーによるものです。なお、アノマリーとは、理論的には説明できないが、経験則上、観測されるマーケットの規則性のことです。
過去10年間の「セル・イン・メイ」を検証
上の表は、日経平均株価とNYダウの過去10年間の株価推移を示したものです。
・騰落率Aは、前年9月末から当年5月末(セル・イン・メイ)までの上昇率
・騰落率Bは、当年5月末(セル・イン・メイ)から当年9月末までの上昇率
「セル・イン・メイ」の5月末までの上昇率(騰落率A)が、5月末からの上昇率(騰落率B)よりも高ければ、この相場格言はまずまず当てはまると言えるのではないでしょうか。さらに、5月末からの上昇率がマイナスとなった場合は、かなり当てはまると言えそうです。
日経平均は騰落率Aの数値がBの数値と比べて高い年は10年中6年ですが、NYダウは10年中8年です。また、10年間の平均では、日経平均が騰落率Aが7.8%、騰落率Bが1.5%。NYダウは騰落率Aが7.5%、騰落率Bが1.5%。ちなみに、5月末からの上昇率がマイナスとなったケースはどちらも3年ずつありました。
これらの結果を見ると、概ね「セル・イン・メイ」は参考になると言えそうで、念頭に置いても良さそうですね。
夏場にパフォーマンスが低下しやすいのはなぜ?
5月から9月中旬にかけ、米国株のパフォーマンスが相対的に低下することになる確かな背景はわかりません。よく言われるのは、米国の税制度による影響で、源泉徴収され過ぎた分の還付が1月末頃から5月まで続くため、その還付資金の流入で5月までは相場が強くなるというものです。
また、欧米では夏季休暇が長期間となる傾向があり、夏場には大きな資金流入が少なくなるとも言われています。そのほか、ヘッジファンドの決算が5月に多いとされ、解約による売り圧力が強まりやすいとの見方もあるようです。
いずれにせよアノマリーの範疇であることには違いないので、これからも毎年この傾向が続くとは限りません。ただ、ある程度の実績があることからアノマリー通りに投資を行う投資家も多いとみられ、それによりアノマリーに沿って相場が動く可能性も考えられます。
2024年もセル・イン・メイ?
さて、2024年ですが、現時点では「セル・イン・メイ」の有効性が続く可能性が考えられます。というもの、秋口には米国大統領選を控えており、株式の買い控え要因につながる可能性が考えられるためです。とりわけ、足元での米国のインフレ長期化の兆しは、トランプ大統領復活の際に大きなリスク要因となります。トランプ氏の積極財政、対中関税拡大、移民規制強化政策などはそれぞれインフレ上昇要因となるからです。
ただ、アノマリーを信頼しすぎると、せっかくの投資チャンスを逃してしまうことにもなりかねません。日々の相場や世界経済の動向を注視しながら、あくまでも過去の経験則として、頭の片隅に置いていくようにしたいものです。
記事作成日:2024年4月11日